理事長挨拶

一般財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター

理事長 小宮山 宏

新年あけましておめでとうございます。
 年頭にあたり、一言ご挨拶を申し上げます。
 地球の異常に対する危機感は世界で高まっています。洪水や干ばつ、山火事、氷河消失、巨大台風など、気候変動はすでに人々が実感するようになりました。我が国でも、2021年には、2050年カーボンニュートラルと整合すべく、2030年度に2013年度比温室効果ガス4 6%削減という目標が決定されました。また、この目標達成に向け、昨年5月には改正省エネ法が成立し、本年4月より施行されます。
 これまでの省エネ法では、化石エネルギーから非化石エネルギーへの切り替えにより削減されたエネルギーも省エネとして評価されてきましたが、改正後は、非化石エネルギーも含めて省エネに取り組む必要となります。つまり、すべてのエネルギーの使用量そのものを削減する必要があるわけです。
一方で、昨年2月のロシアによるウクライナ侵略が核や食料の問題など切迫した危機感をもたらしています。エネルギー的にも、化石燃料需給がひっ迫し、価格は高騰し、その影響は広範囲に及び、さらに長期化する可能性を捨てきれません。
 こうした地球温暖化対策の強化と戦争によるエネルギー価格の高騰という状況を反映して、ヒートポンプ・蓄熱システムへの期待が急速に高まっています。
ヒートポンプ・蓄熱システムは、再生可能エネルギーと認定されている大気や地中の熱を、小さな電力消費で活用できる、優れたエネルギー技術です。電力需要の時間的調整にも活用可能であるため、変動が激しいという再生可能エネルギーの弱点を克服することにも寄与します。家庭、オフィス、工場など汎用性も高く、需要サイドにおける省エネルギーを実現する上で極めて有効です。まだ十分に活用されていない、効果の大きいエネルギー技術なのです。
 昨年末には、家庭用給湯機「エコキュート」が、出荷台数850万台を突破し、家庭分野での導入が進んでいます。しかし、ヒートポンプのポテンシャルから見れば、本格的導入に向けて一歩踏み出したにすぎません。熱力学の教えるところ、エネルギー的な利点は明らかであり、技術的にも進展が著しく、太陽光、風力などのいわゆる再生可能エネルギーと並んで、私たちの未来に欠かせない切り札技術の一つなのです。初期投資をすれば報われること、疑いありません。
 ヒートポンプ・蓄熱システムの導入を、幅広い分野に展開しましょう。本年が大きな飛躍の一年になりますよう、皆様とともに努力したいと思います。
 本年も「ヒートポンプ」と「蓄熱」に関する我が国唯一のナショナルセンターとして、環境にやさしく経済的なこのシステムを、国内にとどまらず、海外にも普及拡大を図り、脱炭素社会に貢献してまいりますので、当センターの活動へさらなるご支援・ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
 末筆ながら、本年の皆様のご繁栄とご健勝を祈念申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。

 

 2023年1月