温度プロフィールグラフの面積が表わすもの(単一槽)

温度プロフィールグラフは、蓄熱槽内の水温分布の状態を、槽内位置と温度を軸にとり、時刻をパラメ-タとして表現したものです。
単一温度成層型蓄熱槽の場合は、縦軸に温度計測位置(高さ)、横軸に温度をとります。
蓄熱槽内の水温は水平方向にほぼ一定であるため、グラフ上の点は、いくつかに分割(スライス)したそれぞれの層の温度を示すことになります。

例として、冷房時における単一温度成層型蓄熱槽の温度プロフィールグラフを示します。仮に、7℃で蓄熱し、二次側からの戻り温度は14℃とします。

図-1は、放熱前(=蓄熱を終えた後)のグラフです。高さ方向にほぼ7℃となっており、冷熱が槽全体に蓄えられていることがわかります。

そして、冷房しながら時間が経過すると、蓄熱槽の冷熱は次第に放熱され、蓄熱槽上部が14℃になっていきます(図-2)。

さらに放熱を続けると、最終的には蓄熱槽全体の温度が上昇し、全体が14℃になります。(図-3)

温度プロフィールグラフは、これら時刻毎のグラフを一枚のグラフで表します。図-4は、放熱前、放熱中、放熱後のグラフを合わしたものです。

放熱前(蓄熱を終えた後) 放熱中 放熱後 放熱前→放熱

さて、温度プロフィールグラフの放熱前と放熱後のグラフで囲まれた面積はいったい何を示しているのでしょうか。
実は、温度差がわかるということは、熱量を示していることなのです。

蓄熱槽内の温度センサーは、図-5に示すように、蓄熱槽の高さ方向に数カ所設置されます。温度プロフィールグラフ上の点は、高さの幅h'n [m] ×面積s[m2]の直方体を代表する温度を表すことになります。

では、この例における放熱量を示す式を表してみましょう。

放熱量 = Σ温度差Δtn[℃]×高さの幅h'n[m]×
面積s[m2]×比重量1[t/m3]×
比熱容量4.18[J/t・℃]

ここで、Σ温度差Δtn×高さの幅h'nは、まさに温度プロフィールグラフの面積を表しています。図6の面積を具体的に求めると、下記のようになります。

図-6の面積 = (温度差(7-7)℃×h'1)+
(温度差(14-7)×h'2)+
(温度差(14-7)×h'3)+
(温度差(14-7)×h'4)+
(温度差(14-7)×h'5)+
(温度差(7-7)×h'6 )

仮に、h'1~6=1mとすると、下記のようになります。

図-6の面積 = 0×1+7×1+7×1+7×1+7×1+
0×1=21

面積と比重量と比熱容量は一定ですから、放熱量の大小は、温度プロフィールグラフの面積の大小で判断して良いことになります。

さて、図-7の面積はどうでしょうか。一見して図-6より小さいことがわかります。図-7の面積を具体的に求めると、下記のようになります。
同様に、h'1~6=1mとします。

図-7の面積 = 0×1+1×1+2×1+2×1+1×1+
0×1=6

図-6は放熱前後で温度差がしっかりついている理想的な温度プロフィールグラフです。放熱前後のグラフで囲われた面積が大きく、放熱量が大きいことがわかります。図-7は、放熱前後で温度差がついてません。放熱前後のグラフで囲われた面積は小さく、放熱量は小さいことがわかります。

なお、この例の場合は、放熱前と放熱後の温度差をグラフ化しているため、グラフの面積は放熱量を示します。一方、蓄熱前、蓄熱後の温度プロフィールグラフの場合は、蓄熱量を示すことになります。

単一温度成層型蓄熱槽と温度計測位置 理想形 不具合事例
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