「蓄熱タイム」と「放熱タイム」

■蓄熱タイム(図-1)

蓄熱システムは夜間など空調負荷のない時間帯にヒートポンプを稼働して冷熱(冷房時)を蓄熱槽にためておきます。

蓄熱時には、ヒートポンプは一定運転ができるので効率の良い運転が可能となります。加えて、夏季は昼間に比べて外気温度が低い夜間に運転するため、熱源機の効率が向上します。

また、夜間の安価な電力を活用できることもメリットとなります。

図-1

■放熱タイム(図-2)

昼間の冷房負荷のある時間帯には、ヒートポンプで冷熱を作りながら、あわせて夜間にためた蓄熱槽の冷熱も使って冷房を行います。 蓄熱システムでは夜間にためた熱を昼間に使うことができるため、ヒートポンプの容量は蓄熱槽を持たない場合と比較して小さくすることができます。

また、変動する負荷には蓄熱槽の放熱量を調整することで追従し、ヒートポンプは一定運転で冷熱を作れば良いので、空調時間帯でも負荷変動にとらわれずに効率の良い運転が可能になります。

図-2

■蓄熱タイム【2】(図-3)

冷房負荷がヒートポンプの容量を下回る場合には、余る冷熱を蓄熱することができます。ここでも、ヒートポンプは冷房負荷に合わせて出力を絞る必要がないため、効率の良い運転が可能となります。

図-3

■蓄熱による電力のピークシフト

一般的に電力消費は夜間少なく、昼間は多くなります。さらに夏場の昼間は冷房需要の増加に伴って大きな電力負荷が生じます。(図-4)そのため、電力会社では夜間(例えば、22時から翌朝8時)の電気料金を安価に設定して、電力負荷の夜間への移行を促進しています。

蓄熱システムは電気料金の安価な夜間に蓄熱し、電力消費が増える昼間に放熱させることで昼間と夜間の電力消費の差を埋める負荷平準化効果があります。このように昼間の電力負荷を夜間に移行することを電力のピークシフトといいます。(図-5)

施設の電力消費のイメージ
電力のピークシフトのイメージ

■蓄熱による電力のピークカット

蓄熱システムにおいて、空調負荷を蓄熱槽からの放熱のみで賄い、熱源機をすべて停止してより一層の電力削減をおこなう運転をピークカット運転といいます。

ピークカット運転は、夏場の冷房需要により電力消費量がピークを迎える時間(例えば13時~16時)に熱源機の運転をすべて停止することで、ピーク電力を打ち消す方向に働くため、より大きな電力負荷平準化を実現します。(図-6)

電力のピークカットのイメージ

■さまざまな蓄熱システム

蓄熱システムには一日24時間を対象に負荷を平準化するもの以外に、より長期間で負荷平準化を行う場合もあります。

例えば教会や場外馬券売り場などのように、特定の曜日に多くの人が集まる施設では、図-7のように1週間のうち数日だけ空調負荷が先鋭化します。通常は、このような空調負荷を賄うためには、先鋭化する最大負荷日に必要な熱源設備容量を持つ必要があります。

一方蓄熱システムでは月曜日から金曜日まで蓄熱しておき、先鋭化する土日に集中的に放熱することで熱源設備容量を低減することができます。蓄熱システムは、発生頻度の少ない先鋭的な空調負荷を平準化することができるため、設備容量を小さくでき、稼働率を向上させることができます。 (図-8)

このように、蓄熱システムは「負荷変動が大きく、かつ消費する日時が予測しやすい施設」ほど有効です。

その他、半年周期(夏⇄冬)で自然エネルギーを蓄熱利用する、年間蓄熱なども行われています。

教会や場外馬券売り場などの空調負荷イメージ
教会や場外馬券売り場などに蓄熱システムを導入した場合の運転イメージ
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