熱源容量と蓄熱槽容量との関係

図-1

図-1に日積算負荷の年間最大日の蓄熱の概念を示します。 (1)昼間の空調負荷を賄うために、 (2)夜間に蓄熱した分を(3)昼間に放熱し、さらに昼間の追い掛け運転を行います。なお本例における熱源の運転時間は、蓄熱・追掛運転を合わせて「24時間」としています。

このような蓄熱システムの熱源容量の決定時に注意しなければならないのは、最大負荷の取り扱いです。「最高の暑さを示す 時間(1時間単位)が発生するピーク最大負荷日」と、「一日中暑い状態が続き、気温の積算値(1時間単位の合計)が最大となる日積算負荷の最大負荷日」を同様に扱うことはできません。

つまり、最大負荷が、時間ピークか日積算かに気を付ける必要があるということです。
非蓄熱システムの場合には、一般的な負荷計算(1時間単位)で算出した「ピーク負荷」を参考にして、ピーク負荷を賄えるように熱源容量を決定します。

一方、蓄熱システムの場合には、熱を作る時間と使う時間とをずらすことができるので、日積算負荷を一日の中で生産すれば良いことになります。
そのため「日積算負荷の年間最大値」を基に、日積算負荷の年間最大日における「熱源運転時間」と、「熱源容量」を併せて決定することになります。

なお、この例では、日積算負荷の年間最大日は24時間運転することを前提としていますが、例えば当該日において熱源機の運転を抑制(24時間以下に)する場合には、熱源容量が増加することになります。

そのため「熱源容量」と日積算負荷の年間最大日における「熱源運転時間」とは反比例関係となります。

さらに、例えば1日の中で突出した負荷が生じる時間帶がある場合には、その突出した時間帶に集中して放熱することで負荷を賄うことができます。特に、このような場合には、「ピーク負荷」を参考にした非蓄熱システムの熱源容量と比べて、大幅な熱源容量の縮減を図ることが可能となります。
以降の蓄熱槽容量を変更した場合のコラムでは、簡単のため、例えば「日積算負荷の年間最大値の50%」を蓄熱で賄う場合には、「蓄熱依存度50%」と呼称して表現します。

図-2

図-2に示す日積算負荷の年間降順表示の模式図中に、蓄熱依存度10・30・50%のラインを示します。

蓄熱依存度50%の場合、図中のライン以下の台形の部分(紫線の台形)は蓄熱で賄うことが可能となります。これを年間負荷合計(青い三角の面積)を基準に考えますと、年間の75%(3/4)を蓄熱で賄うことができます。(以降この割合を「年間夜間移行率」と呼ぶ)。また、同様に蓄熱依存度30%の場合は年間夜間移行率が50%、蓄熱依存度10%の場合は年間夜間移行率が20%となります。

図-3

この蓄熱依存度と年間夜間移行率の関係を図-3に示します。蓄熱依存度が小さい場合には、多少なりとも蓄熱依存度を高めることで、年間夜間移行率を効果的に高めることができます。一方で蓄熱依存度が高くなればなるほど年間夜間移行率の向上効果は相対的に薄くなります。

以上の試算では、年間降順表示の負荷を模式的に三角形で示していますが、実際は日積算負荷の年間最大日が飛びぬけて大きく、また低負荷となる日が非常に多くなることが一般的です。そのため、図-3で判るように実際の年間夜間移行率は、前述の簡易な試算よりも大きくなることが期待できます。

このように蓄熱システムでは「ピーク負荷」で蓄熱容量を検討するのではなく、「日積算負荷の年間最大値」で導入効果を検討することが肝要です。

ページの先頭へ

コラム一覧ページへページを閉じる