冷房負荷V.S.暖房負荷

建物に発生する冷暖房負荷の大きさや傾向(ピーク値、年間総量、冷房と暖房の比など)は、その用途、規模、地域などにより様々です。

図1は、地域別の建物数を示したものです。特に関東などの都市部に多く、その中でも東京都は全国の建物数の16%を占めます。

建物用途別の割合は、全国で見ると事務所が3割を超え最も多く、建物数が最も多い東京都では、その割合は6割を超えます。

このように事務所ビルの多い東京都では、冷暖房負荷を処理するために多くのエネルギーを使用し二酸化炭素を排出していることから、環境保護条例で事務所ビルに対し「二酸化炭素削減義務」が課されています。

以下では、事務所ビルにおける冷暖房負荷の傾向を規模別に概観し、さらに、用途や地域が異なる建物でも見てみます。

図1



図2~8は各建物の冷暖房負荷を示したものです。
左側のグラフは日積算負荷を降順表示したもの、右側のグラフは年間の負荷合計値を示しています。どちらも、縦軸の正の値が冷房負荷、負の値が暖房負荷です。

図2は東京の事務所ビル(延床面積5,400m2)の冷暖房負荷を示したものです。ピーク負荷を比べてみると、冷房ピーク負荷が暖房ピーク負荷より大きく、3.5倍ほどになっているのに対し、年間の負荷合計値の比は、冷房負荷100に対し暖房負荷15となっています(6.5倍)。このことから、暖房負荷は冷房負荷に比べ小さく、その比率はピークよりも年間の負荷の方が小さいことがわかります。

図2

東京の事務所ビルで、規模の異なる建物の冷暖房負荷を図3(延床面積7,800m2)、図4(延床面積34,300m2)に示します。冷暖房ピーク負荷の比や年間の負荷の大きさなど図2~4で同様の傾向を示していることがわかります。
図3

図4

図5は東京都内のオフィスビル群+商業施設(延床面積437,600m2)の冷暖房負荷です。事務所ビルに比べ暖房負荷の割合が大きく、年間の冷房負荷と暖房負荷の比は、100:32となっています。

図5

図6は東京の物販店舗ビル(延床面積89,500m2)の2009年度の冷暖房負荷です。事務所に比べ冷房負荷が大きく暖房負荷が小さいことがわかります

図6

図7は名古屋の病院(延床面積186,000m2)の冷暖房負荷です。事務所に比べ暖房負荷が大きいことがわかります。

図7

図8は仙台の事務所ビル(延床面積64,500m2)の冷暖房負荷です。やや寒冷な地域であることから東京に比べ暖房負荷が大きくなっており、冷房負荷と暖房負荷のピーク値がほぼ同程度、年間の冷房負荷と暖房負荷の比は100:55となっています。

図8


図9に地域冷暖房(日本国内132地区対象)の冷温別販売熱量を散布図で示します。
一部、寒冷地(北海道・東北地区)や住宅中心への地区では、冷熱より温熱の販売熱量が多くなりますが、多くの地区は冷熱の販売熱量が温熱を上回る傾向にあることがわかります(プロットに対する近似直線の相関性が見られます)。

図9


図10は、全国の地域冷暖房の年間販売熱量比(冷熱を100%とした時の温熱の比)の頻度です。
比が100%以上(温熱販売熱量の方が冷熱販売熱量よりも多い)の地区はわずか14件であり、前述の寒冷地か住宅中心の地域冷暖房となっています。最も冷温比の頻度が高いのは30~40%で、全地区を含めた平均は46%です。

図10


このように、エネルギー密度の高い地区に位置することが多い「日本の地域冷暖房」は、冷熱を中心とした熱供給を行っている実態にあります。

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