冷却塔

 本コラムでは本編で登場した冷却塔(図中赤点線)について詳しくみていきます。(図1)

図1

 冷却塔とは、冷凍サイクルにおける冷媒の凝縮工程で温度が上がった冷媒の冷却に供した冷却水を、再び冷却に使用できる温度に戻すことを目的とした機器です。図2の冷凍機凝縮器内の冷媒冷却方式の分類に示すように、水冷式の冷凍機を設置する際に必要となります。

図2

 冷却塔内で冷却水の温度を下げる作用として、
1.冷却塔内に取り込まれた空気と冷却水の接触による顕熱量変化
2.冷却水の一部を蒸発させることで冷却水自身の温度を下げる潜熱量変化
この2つが挙げられます。顕熱量変化は冷却水温度と図3の乾球温度に関係し、潜熱量変化は図3の湿球温度に関係しています。

図3

図4に冷却塔に取り込まれた空気(外気)の状態変化を表した空気線図を示します。冷却塔に取り込まれた空気(状態点A)は温度・湿度を変化させ冷却塔出口(状態点B)に向かって移動します。水から空気に伝わる熱量の内訳に注目すると、顕熱量変化(温度変化)と比較して潜熱量変化(湿度変化)に要する熱量が多いことがわかります。

これは、水の温度を1℃変化させるために必要な熱量(顕熱)が4.2kJ/kg・℃に対し、水が蒸発することによる熱量(潜熱量)は約2257kJ/kgであるためです。(標準大気圧下)
また、冷却水温度は冷却塔に取り込む空気の湿球温度以下になることはありません。相対湿度100%の時(蒸発できない)に乾球温度=湿球温度となるからです。

図4

 冷却塔内での冷却水の動きと冷却水の温度変化について、図5に示す開放式冷却塔(向流式)を例に説明します。
冷凍機から送られた冷却水(C)は、冷却塔上部の散水装置から充填材に向けて散水され、冷却塔下部から取り込まれた空気(A)と接触します。充填材は冷却水と取り込んだ空気との接触面積・接触時間を多くするために設置されています。冷却塔上部の送風機により吸い込まれた空気(A)は充填材のすきまを通過し、冷却水の蒸発を促します。蒸発潜熱を奪われた冷却水(D)は温度が下がり、冷凍機へと戻されます。また、取り込まれた空気(A)は水との接触により温度が上がり(B)、冷却塔上部から外へ排出されます。送風機直下のエリミネーターは、空気(B)が同伴する水滴の飛散防止材です。
図5右側のグラフは冷却水と取り込まれた空気の温度変化を表しています。冷却塔入口空気温度(A)と冷却水出口温度(D)の差をアプローチといいます。アプローチは冷却塔の性能が高いほど小さくなりますが、一般的な冷却塔のアプローチは経済性も考えて5℃程度に設計されています。

図5

 冷却塔は開放式の他に、密閉式および、蒸発式(エバポレーティブコンデンサー 略称:エバコン)があります。
図6に示した密閉式冷却塔は、冷却塔内にプレート式や多管式・フィン付き管を敷設し、管外に散布した水の蒸発潜熱にて管内の冷却水を冷却します。冷却部を除けば開放式の冷却塔と機構はほぼ同じです。空気中の不純物が管内の冷却水に混入する恐れが無いため、冷却水の水質管理が容易になります。
図7に蒸発式冷却塔を示します。冷凍機の凝縮器・冷却コイルを冷却塔まで延長させ、冷却コイルへ水を直接散水し、水の蒸発潜熱により冷却コイル内の冷媒を冷却(凝縮)する方式です。

図6 図7

 冷凍機凝縮器内の冷媒蒸気を冷却(凝縮)する方式として、「水冷式」だけでなく空気の顕熱のみを利用した「空冷式(図8)」があります。 図9の凝縮器出入口における空気の状態を見てもわかるように、取り込まれた空気の乾球温度は凝縮器出口に向かうにつれて高くなりますが、絶対湿度の変化は無く、顕熱量変化のみで冷媒の冷却をしていることがわかります。
水冷式と比較すると潜熱冷却分がないため、コイル表面には図8に示すフィンを数㎜間隔で設置する等、空気⇔コイルの伝熱面積を大きくする工夫が必要となります。

図8

図9

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