「潜熱」「顕熱」について

氷が水へと状態(相が)変化するとき、変化している間は加熱されているにもかかわらず温度は一定値のままです。また、水が水蒸気へと状態変化するとき、変化している間は加熱されているにもかかわらず温度は一定値のままです。
逆に、水が氷へと状態(相が)変化するときも、変化している間は冷却されているにもかかわらず、温度は一定値のままです。同様に水蒸気が水へと状態(相が)変化するときも、変化している間は、冷却されているにもかかわらず温度は一定値のままです。
状態を変化させる(相を変化させる)ために熱が使われているからです。

図-1のように、物質が固体から液体、液体から気体、固体から気体、あるいはその逆方向へと状態変化(相変化)する際に必要とする熱のことを「潜熱」と言い、温度変化を伴いません。
一方、温度変化を伴う熱を「顕熱」と言います。
状態変化(顕熱変化/潜熱変化)の種類と、水が状態変化するときの熱量と温度の関係を図-2に示します。0℃の水の持つ熱量を基準(ゼロ)にして横軸に示しています。

状態変化の種類
水の温度変化

空調負荷計算では、熱負荷を「潜熱」と「顕熱」に分けて考えます(表-1参照)。一般に空気は質量にしてわずか1〜3%の水蒸気しか含んでいませんが、このわずかな水蒸気が空気の熱量変化に大きな影響を与えます。

図-3に示すように、冷房時、空調機内に導入されたコイル入口空気(室内空気の一部に新鮮な外気を加えたもの)は空調機内の冷却コイルで接触冷却され、コイル出口空気として室内に給気されます。コイル出口空気は冷風となり、冷房に供されます。
暖かく湿った入口空気は冷却コイルの表面で冷却され、空気中の水蒸気が結露し、凝縮水として排出されますので、結果として空気中の水蒸気を取り除く(除湿する)ことができます。
即ち冷房とは、単に空気温度を低下させるだけでなく、除湿を同時に行うことで、空気の保有する熱を下げる行為と言うことになります。空気温度の低下に供された熱を「顕熱負荷」、除湿に供された熱を「潜熱負荷」と言います。(「顕熱負荷」の中には、わずかですが、もともと存在していた水蒸気の温度を下げる熱、つまり、水蒸気の顕熱変化も含まれます)

一方、暖房時(図-4)、 空調機内に導入されたコイル入口空気(室内空気の一部に新鮮な外気を加えたもの)は空調機内の加熱コイルに接触加熱され、コイル出口空気として室内に給気されます。コイル出口空気は温風となり、暖房に供されます。
暖房時の場合、加熱コイルに接触した入口空気は水蒸気を含んだまま加熱されます。このとき、空気温度は上昇する顕熱変化のみで、加熱コイルとしては「顕熱負荷」を処理することになります。
ただし、コイル出口空気の調湿のため、別途設置された加湿器により水蒸気の供給が行われます。そのための水蒸気加湿量は「潜熱負荷」にカウントされます。

冷房負荷における顕熱と潜熱
暖房負荷における顕熱と潜熱
熱負荷の分類(顕熱負荷/潜熱負荷)
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