氷蓄熱のすごいところをさらに引き出す方法

 本編では、第10章で「氷蓄熱を利用した低温送風空調システム」を用いることによる搬送動力、イニシャルコスト、ランニングコストなどトータルな導入効果について『“おトク!”氷蓄熱ショッピング』として説明し、第11章『氷蓄熱って、すごかったんだ!』では氷蓄熱によるメリットについて説明しました。。

 一方、水蓄熱に比べて低温が必要な氷蓄熱では、(理論的に)避けられない冷凍機の効率低下の問題があることを、第10章後半の『つくるのはタイヘン!』で実験を通し説明し、コラム『10-1 冷凍運転がタイヘンな理由』でも詳しく解説しました。

 氷蓄熱は万能ということではなく、のほほんと製氷運転をしているだけではかえって非効率な運転となることもあり得ます。本コラムでは、氷蓄熱を賢く使っていく方法『(夜間)蓄熱運転時と(昼間)放熱運転時で、冷凍機の蒸発温度を変える』ことについて示します。

 冷凍機のCOP向上を図った氷蓄熱運転を行うことが肝要です。


氷蓄熱運転(一般的な事務所ビルの場合)について、アイスオンコイル(外融式)を用いた運転例を示します。

(備考)
冷凍機で冷却されるブライン温度、外気の乾湿球温度、負荷状況で変動する空調機からの2次側冷水温度、氷蓄熱槽内の熱挙動状況などの影響要因を単純化・仮定化して説明しています。





図1

低温度での送水例
 (夜間)蓄熱運転時は冷凍機にて氷蓄熱を行い、蓄熱槽内に氷を生成します。
 (昼間)放熱運転時は冷凍機にて追いかけ運転を行いつつ、蓄熱槽から冷水(0~4℃)を取り出し、冷房の用に供します。追いかけ運転時も製氷温度は夜間とほぼ等温で運転されます。





図2

低温度での送水例
(昼間)放熱運転時の冷凍機は、(夜間)蓄熱運転時よりも高めの温度のブライン(10℃)を製造し、熱交換器にて2次側機器からの還水(16℃)と熱交換します。熱交換器で昇温したブライン(15℃)は、再び冷凍機にて冷却(10℃)される循環回路を形成します。
 一方、熱交換器でプレクールされた2次側還水(11℃)は氷蓄熱槽へ投入され、等量の冷水(0~4℃)が空調機へと送水される循環回路を形成します。  (昼間)の冷凍機追いかけ運転時のブライン温度を高めに設定し、高COPの運転とすることで、(夜間)蓄熱運転時の低COPをカバーします。





図3

通常温度での送水例
(昼間)放熱運転時の冷凍機は、(夜間)蓄熱運転時よりも高めの温度のブライン(10℃)を製造し、熱交換器にて2次側機器からの還水(16℃)と熱交換します。熱交換器で昇温したブライン(15℃)は、再び冷凍機にて冷却(10℃)される循環回路を形成します。
 一方、熱交換器でプレクールされた2次側還水(11℃)の一部は氷蓄熱槽へ投入され、残りの一部は氷蓄熱槽からの取り出し冷水(0~4℃)と三方弁で混合されて、所望の温度(7℃)にて空調機へと送水される循環回路を形成します。
 (昼間)の冷凍機追いかけ運転時のブライン温度を高めに設定し、高COPの運転とすることで、(夜間)蓄熱運転時の低COPをカバーします。

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