蓄熱槽水の非常時利用

 蓄熱槽の水は消火活動時の消防用水や断水時等の生活用水として利用することが可能です。特に近年、大型台風や豪雨などの自然災害が毎年のように発生しており、事業継続性(BCP)の観点から断水時の対策方法として蓄熱槽水の有効活用について関心が高まってきています。(図-1)

図1


■蓄熱槽水の消防用水利用

 蓄熱槽水を消防用水として利用する場合、消防法の関連法規に基準が定められています。実際の計画においては、これら基準を準拠するとともに、所轄消防署との協議を行い、具体的な計画を進めていくことが必要です。

 消防法の関連法規 記載事項抜粋(下記内容について具体的に明記されています)

  • 空調用蓄熱槽水の温度及び水質について
  • 空調用蓄熱槽水の水量について
  • 空調用蓄熱槽の設備について
  • 他の水源との共用について
  • その他

消防予第42号「空調用蓄熱槽水を消防用水として使用する場合の取扱いについて」(平成9年3月6日)


■蓄熱槽水の生活用水利用

1 目的と事前の計画
 蓄熱槽水を非常時(断水時等)に生活用水として利用する場合、利用する目的、対象箇所、想定使用量、飲料用への適用有無、断水時・停電時・排水不良時での対応有無など、事前の計画が必要です。目的に合わせて必要な設備・システムを構築する必要があります。

2 計画時の留意事項
 非常災害はいつ発生するか予測がつかないため、蓄熱槽水を非常時に生活用水として利用する場合、蓄熱槽水の温度、使用可能量(蓄熱槽内貯留量)、水質に留意し、計画する必要があります。

A 蓄熱槽水の温度
計画する蓄熱槽が冷水と温水を兼用する冷温水槽の場合、時期によって蓄熱槽水の温度が変わります。蓄熱槽水の温度を考慮し、目的に合わせて使用する蓄熱槽水を選択する必要があります。

B 使用量
非常時の一つのケースとして想定する断水時において、使用量は非常災害発生時の蓄熱槽内貯留量に左右されるため、必要量が確保できないケースも考慮した計画が必要となります。

C 水質
蓄熱槽水に使用される水は一般的に水道水が多く用いられます。蓄熱槽水の水質は蓄熱槽の材質や貯留時間などの条件により異なりますが、ケースにより水道水基準値を超える項目があります。そのため、非常災害時にて蓄熱槽水を飲用として使用することは避け、飲用として使用する場合は、ろ過装置や滅菌装置等の設置について計画が必要です。


■東京電機大学東京千住キャンパス5号館における具体的な取り組み

 図-2として、東京電機大学東京千住キャンパス5号館における、蓄熱槽水の通常時の取組について紹介します。
 また、蓄熱槽水の利用以外にも非常時(停電、断水、排水不良)を想定した取組を行っていますので、図-3として紹介します。

図2

図3



ページの先頭へ

コラム一覧ページへページを閉じる