蓄熱槽

 本コラムでは本編で登場した蓄熱槽と周辺機器について詳しくみていきます。(図1)

図1

 図2は、蓄熱槽と蓄熱槽周辺機器を表した図です。説明の便宜上、冷凍機側と二次側機器類を蓄熱槽の左右に配置しています。

 図2中の蓄熱槽内に接続された配管に付随する番号は、図1中の配管番号と対応しています。 冷凍機から蓄熱槽へ冷水を送る配管(3) と蓄熱槽から熱交換器へ冷水を送る配管(3’)は、蓄熱槽内の配管先端を蓄熱槽の床面側に向けます。一方、蓄熱槽から冷凍機へ冷水を送る配管(4)と熱交換機から蓄熱槽へ冷水を送る配管(4’)は、蓄熱槽内の配管先端を蓄熱槽の水面側に向けます。これは、比重の大きい冷たい冷水は蓄熱槽底面付近で(3)から吐き出された後、 (3’)から吸い込まれるようにするためです。逆に、温かい冷水は蓄熱槽水面付近で、(4’)から吐き出された後、 (4) から吸い込まれるようにします。

図2

 配管内(3’)の水を2色で示しています。紫色は夜間に蓄熱した冷水を、青色は放熱(空調)運転中に冷凍機を稼働する「追いかけ運転」で発生させた冷水を表しています。図3に示すように、 「蓄熱分の放熱+冷凍機の追いかけ運転分の放熱」を行うことで、1日の最大空調負荷が発生しやすい昼間の空調負荷を賄います。また、冷凍機の追いかけ運転で処理する空調負荷を毎時間一定量(図3空調負荷(1))とすることで、冷凍機を効率的に稼働させることができます。※蓄熱Web講座PRO 解説コラム5-1を参照

図3

 図4に示す非蓄熱式空調システムの場合、冷凍機で発生させた冷水を二次側機器へ直接送り、二次側機器で利用(放熱)された冷水は冷凍機へ直接戻します。そして、冷凍機で冷却された冷水を再び二次側機器へ送るというプロセスとなります。図5に示すように、発生した空調負荷を逐次処理しなければならないため、年間最大空調負荷を処理可能な冷凍機を選定しなければなりません。そのため、蓄熱システムを採用した場合と比較して冷凍機容量が大きくなります。
本編5章に示すように、年間最大空調負荷の様に大きな空調負荷が発生するのは年間で数時間しかありません。そのため、大容量の冷凍機で小さな空調負荷を処理する非効率的な運転頻度が多くなってしまいます。

図4

図5

 図2の熱交換器がなぜ必要なのか不思議に思った人もいると思います。熱交換器が無い場合、この回路は開放回路であるため、蓄熱槽から二次側機器への冷水供給を停止した際に配管中の冷水が蓄熱槽に落ち込んでしまいます。そこで、熱交換器を設置することにより密閉回路として搬送動力(静水頭)を削減するとともに、冷水の落ち込みを防止しています。現在は熱交換器を設置することが当たり前となっていますが、かつては熱交換器が非常に高価であったため、設置することが稀でした。

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