14-1 ポンプの流量制御

 解説コラム12-1 「2次側システム(三方弁、二方弁)」でも触れたように、蓄熱システムの二次側におけるポンプの流量制御は、定流量制御変流量制御に大別されます。本コラムではインバータを用いたポンプ回転数制御による変流量制御について解説します。

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■ポンプの流量制御を行う理由

 ポンプの必要流量は室内負荷により変動します。室内負荷に応じて各空調機の要求流量が変わるため、インバータを用いてポンプの送水量を増減させることで室内負荷に対応します。(図-1)

図1

 制御の例としては図-2に示すように、

① 給気温度が設定値となるよう、空調機毎にバルブ開度の比例制御を行い、

② 空調機毎の必要流量の増減により、配管系統の圧力が変動するため、

③ 圧力が適正値になるようにポンプの変流量制御を行います。

このような制御を行うことで、冷温水の往還温度差を一定に保ちながら、室内環境を安定させることが可能になります。

図2


■インバータによるポンプ回転数制御

 ポンプ流量制御はインバータを用いた回転数制御にて行います。図-3・図-4に制御状態の一例を示します。

 インバータには周波数の下限値による最小流量があるため、蓄熱式空調システムを採用する際はバイパス回路を設けることで蓄熱槽の温度を適正に保つように計画する必要があります。


(補足)
 ある主要メーカーの技術資料には「インバータの出力下限周波数は電動機定格出力の60%程度」との記載もあり、この出力下限周波数によりポンプの送水量に制御下限値が設定されます(詳細はポンプメーカーに確認が必要です)。

 一部の物件では出力下限周波数を更に低く設定することもあり、本編で取り上げている東京電機大学の校舎では15Hzとすることで、より省エネルギーな運転が行えるよう運用しています。


図3

[必要流量がポンプ制御下限値以上の場合]

配管系統の必要流量がポンプのインバータによる制御下限値以上の場合は、ポンプ制御のみで流量調整を行います。この時、バイパス弁は指令により閉状態です。
図-3は制御下限値が定格の60%と設定して、ポンプの流量制御を行った場合に、配管系統の必要流量が70%であるときの制御状態を示します。

図4

[必要流量がポンプ制御下限値未満の場合]

配管系統の必要流量がポンプのインバータによる制御下限値未満の場合は、ポンプ制御+バイパス弁で流量調整を行います。
図-4は制御下限値を定格の60%と設定して、ポンプの流量制御を行った場合に、配管系統の必要流量が40%であるときの制御状態を示します。
ポンプは60%までしか流量を絞れないため、20%をバイパス回路で蓄熱槽に戻すように弁の制御をすることで、過剰送水及び還り温度の低下を防ぎ、蓄熱槽の終端側の温度を適正に保つことができます。


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