「冷暖房負荷」を構成する様々な要素

■冷暖房負荷とは・・・

「冷暖房負荷」
室内をある一定の温湿度に保っている時、その部屋をその温湿度に保つために空気から取り除くべき熱量、または空気に供給すべき熱量

「冷暖房負荷」は、室内をある一定の温湿度に保っている時、その部屋をその温湿度に保つために空気から取り除くべき熱量、または空気に供給すべき熱量を言います。時々刻々と変化する環境条件に応じて、冷房時は、室内温度を外気温度よりも下げるために、室内に入ってくる熱量を取り除く必要があります。逆に暖房時は、室内温度を外気条件よりも上げるために、室内から出ていく熱量を加えてあげる必要があります。

室内空気を基準とするため、日射により床が温められただけでは負荷とはなりません。この場合、床から室内空気に熱が伝わって、初めて冷暖房負荷となります。“あくまでも空気を加熱、あるいは冷却した時点に注目していますので、注意が必要です”

その室が取得する熱量を除去したり、損失する熱量を補給するために冷暖房機器が必要となり、それらの熱量を計算(=熱負荷計算)することにより、冷暖房機器の容量を算出することができます。

■冷房負荷

冷房時における、室内と屋外との熱のやり取りをイメージしてみましょう。(図-1)

仮に外気温度が32℃で室内温度が26℃とすると、32℃の外気から外壁やガラス面を通じ26℃の室内に熱(貫流熱、顕熱)が入ってきます。

また、室内の湿度を50%に保とうとすると、人体や器具類から発生する水蒸気(潜熱)を取り除くことで、湿度を保つことができます。

室内へ入ってくる顕熱および潜熱と等しい顕熱および潜熱を、それぞれルームエアコンによって屋外へ汲み出せれば、室内の温湿度は一定に保たれます。しかし、ルームエアコンの場合、気温はともかく湿度制御の機構を有していませんので、湿度は成り行きとなります。

セントラル空調の場合、まず潜熱を所望の湿度状況まで除去し、その後、所望の気温に調整します。その時に必要な負荷を「再熱負荷」と言います。
※「再熱負荷」については解説コラム3-5で説明します。
入(潜熱)=出(機器容量)

冷房状況のイメージ

■暖房負荷

暖房時における、室内と外界との熱のやり取りをイメージしてみましょう。(図-2)

仮に外気温度が5℃で室内温度が22℃のとき、22℃の室内から外壁やガラス面を通じ5℃の屋外に熱(貫流熱、顕熱)が出て行きます。

また、室内の湿度を50%に保とうとする時、人体や器具類から発生した水蒸気(潜熱)だけでは不足する場合、別途、加湿器で水蒸気(潜熱)を補って湿度を保つことができます。

ルームエアコンは室内から出て行く顕熱と等しい熱を室内に供給し室内気温を保ちます。ただ、加湿器を停止しでも過剰な湿度になる場合、暖房時のルームエアコンは減湿する機能を持たないので、湿度は成り行きになります。
入(潜熱)=出(機器容量)

暖房状況のイメージ

■室内で発生する冷暖房負荷(室負荷)

室内の温湿度状況を変化させようとする要因(外乱)として、貫流負荷、日射負荷、人体負荷、内部発熱負荷を代表的な負荷として本編で取り上げ、図-1、図-2で機器容量と暖房負荷、冷暖負荷の状況をイメージしました。

更に、冷房負荷を分解すると図-3のようになります。図中、換気扇(外気負荷)で示した換気に基づく負荷は、業務用ビルなどのセントラル空調システムの場合、外気を吸気口からまとめて取り入れ、それを空気調和機を通過する際に加温あるいは冷却(除湿)しますので、室負荷ではなく、室外で発生する空調機負荷の区分として計上されます。

室内で発生する冷暖房負荷

■空調システムと冷暖房負荷

セントラル空調システム全体を眺めると図-4に示すように、空調室、空調機、熱源機、およびそれらを接続するダクトや配管で構成された基本的な組み合わせが存在します。

更に組み合わせとして、例えば、各階別、方位別、使用時間別など主に制御ゾーンを同一とする区分けで空調室、空調機、ダクトや配管接続が類別されます。それらの分類に対して時間毎に集約し、熱源機容量が求められます。

室負荷、空調機負荷、熱源機負荷の区分で冷暖房負荷を整理すると図-5になります。

空調システムと冷暖房負荷

■冷暖房負荷の分類

図-5に示した区分そのもの、負荷算定の方法自体、あるいはそれ以外の様々な事項に対しても、対象とする建物に応じた判断が設計者の責任行為として行われています。

例えば図-3で、冷房負荷としては一般に計上する照明負荷や人体負荷、更には日射負荷に対しても、これらは暖房時にはプラス要因(安全側)として働くので、敢えて暖房負荷として計上する必要はないと判断し、大きな熱源容量を指向選定する設計者もいます。

さて、図-3中に記載した「間欠空調による蓄熱負荷」、また放射成分を伴う「日射負荷」や「照明負荷」については、改めて“負荷の変動”を扱う章において説明することにします。

これまで説明してきた「冷房負荷」、「暖房負荷」ですが、日常会話の中では正確な意味の「熱負荷」より広義な見地で語られることが多くあります。少々のアバウトさは通常問題となりませんが、今後説明する“負荷の変動”を扱おうとすると、より正確な立場から「熱負荷」を理解しておく必要があります。
※「基準温湿度」と「設計温湿度」については解説コラム3-4で説明します。

冷暖房負荷の分類
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