COOL&HOT 小宮山理事長対談

小宮山 宏

  • 一般財団法人
    ヒートポンプ・蓄熱センター理事長
  • 三菱総合研究所理事長
  • 東京大学総長顧問

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小泉 武夫

  • NPO法人
    発酵文化推進機構理事長
  • 東京農業大学名誉教授
  • 鹿児島大学客員教授

小宮山理事長対談

受け継がれる伝統の精神とヒートポンプ・蓄熱システムの融合

発酵が切り拓く日本の未来 クオリティーを追い求めよ

小泉武夫様小泉 私は「FT(ファーメンテーション・テクノロジー)革命」もしくは「発酵革命」と言っていますが、人類にとって一番重要なことは、人に優しく、地球に優しくなければなりません。そこで発酵革命では四つのことを挙げています。まず一つは人間の健康の問題です。がんなどの難病はすぐには治りません。しかし、制がん剤などの薬は必ず微生物が作ってくれるはずです。二つ目は環境問題です。生ごみは燃やすのでなく、発酵させることで肥沃な土を作ることができます。そして三つ目は人類の食料問題です。
爆発的に発展途上国の人口が増え、将来、人類は何を食べていくのでしょうか。地球上には年間約百億トンの落ち葉があると言われています。落ち葉はブドウ糖でできています。すべての生命体の根源です。病気等で食事が摂れない時はブドウ糖の点滴で生きていけます。つまり、発酵によって落ち葉の繊維からブドウ糖を取り出せれば、食料問題の解決のひとつになるのではないでしょうか。四つ目はエネルギー問題です。生ごみを発酵させ、炭化水素を作る菌はすでに見つかっています。現在は水素を取り出せる細菌に関する研究をしており、巨大なエネルギーを得られる可能性があります。夢のような話ですが、すべて現実なのです。ヒートポンプで夢のような話だったことを実現することができたように、発酵もさまざまな課題を解決してくれるはずです。

小宮山理事長小宮山 私は「プラチナ社会の実現」を提唱しています。プラチナ社会とは「地球環境問題を解決した元気な超高齢社会」のことを指しています。人間の平均寿命はローマ時代以降ずっと24~25歳でした。それが1900年になってようやく31歳まで延び、現代では70歳を超える長寿社会になりました。「衣食住」「移動の自由」「長寿」など、かつては一握りの支配層の人間が占有していたものを、われわれ普通の人間が持つことができる量的飽和の時代が到来しています。これは産業革命の効果、すなわち工業化や大量生産技術によって得られた恩恵ですが、量的飽和により、これからは量よりもクオリティーが求められます。クオリティー・オブ・ライフです。「もっと快適な家に住みたい」「もっと健康で自立した老後生活を送りたい」「もっと美味しい料理、美味しい日本酒を食したい」というように、人生の目標は大きく変化しています。「規格化」「大量生産」「生産者側の論理」といった考え方から、「多様化」「クオリティー・オブ・ライフ」「消費者側の論理」といった考え方に文化そのものが動いており、ヒートポンプや発酵はそうした新たな世界に非常にマッチするのではないでしょうか。

小泉 新しい良い社会というのは、そうしたトータルバランスがとれた社会です。まったくその通りだと思います。

小宮山 本日は大変興味深い話をうかがうことができました。ありがとうございました。

小宮山知事長と小泉武夫様

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Profile

小宮山理事長

小宮山 宏(こみやま ひろし)

  • 一般財団法人
    ヒートポンプ・蓄熱センター理事長
  • 三菱総合研究所理事長
  • 東京大学総長顧問

専門は地球環境工学、科学システム工学、機能性材料工学、CVD反応工学、知識の構造化など。地球温暖化問題の世界的権威。多くの省エネ対策を施した自宅は「小宮山エコハウス」として有名。

小泉武夫様

小泉 武夫(こいずみ たけお)

  • NPO法人
    発酵文化推進機構理事長
  • 東京農業大学名誉教授
  • 鹿児島大学客員教授

福島県小野町の造り酒屋に生まれる。東京農業大学農学部醸造学科卒業後、同大学で研究を続け、農学博士を取得。発酵学者として活躍する一方、食文化論者としても、1994年から続く日本経済新聞夕刊のコラム「食あれば楽なり」をはじめ、書籍は多数執筆。マスコミへの出演、講演も精力的にこなす。