熱を蓄熱槽に蓄えておくことで、熱の生産と消費をずらすことによりさまざまなメリットがあります。
【1】昼間最大電力の削減(電気の需要の最適化効果)
昼間のピーク時間帯使われる電力を夜間へ移行するため、電力の負荷平準化が可能です。
たとえば空調は事務所建物の電力消費の半分以上を占めており、夏や冬の昼間時間帯における電力増の主要因となっています。
空調にヒートポンプ・蓄熱システムを導入することで、昼間の空調に必要な冷熱の半分を蓄熱でまかなった場合、昼間最大電力を約2割削減※することが可能です。
※建物規模・用途等で削減量は変化します。
ピークシフト電力は全国で約196万kW(2015年年度)に達しています。
これは40万kWの火力発電所4基分以上に相当する昼間最大電力削減効果に相当します。
【2】省エネ性・環境性
蓄熱槽を活用することで、ヒートポンプは常に変化する空調負荷に影響されずに効率的な一定運転が可能となります。
冷房時は夜間の涼しい外気を利用して冷熱をつくるため、ヒートポンプの効率がさらに向上します。(外気温25℃稼働時では35℃稼働時に比べてヒートポンプの効率は約2割向上します)
【3】経済性
熱源設備容量を小さくできるので、契約電力削減により基本料金が抑えられます。
電気料金メニューの活用により、夜間の割安な料金を利用できます。
○詳しい電気料金メニューについては、各電力会社にお問い合わせください。
<建物条件>
用 途 : 事務所、延床面積 : 1万㎡
所在地 : 名古屋市、年間冷房負荷 : 1,970GJ、年間暖房負荷 : 590GJ
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標準機器(非蓄熱) |
氷蓄熱式 |
熱 源 設 備 |
空冷ヒートポンプ
冷房能力434kW×2台 |
空冷ブラインヒートポンプ
冷房能力289kW×2台 |
蓄 熱 槽 |
なし |
ユニット型氷蓄熱槽
槽容量23㎥×2基 |
ランニングコスト |
100% |
93% |
1)イニシャルコストは熱源設備、蓄熱槽、熱搬送ポンプ、自動制御、電気設備など
注:一般財団法人ヒートポンプ・蓄熱センターによる試算例。イニシャルコストおよびランニングコストは建物状況、設備状況、空調負荷、電気契約種別などにより異なります。
【4】防災対策(BCP)
非常災害時には、蓄熱槽の水を生活用水や消防用水として活用可能です。
○東京スカイツリー地区では、大規模災害が発生したときには、水蓄熱槽の水を生活用水として周辺の住民に提供するという協定を墨田区と結んでいます。
成人が1日あたりに使用する水の量を約30ℓ//人とすると、23万人分の生活用水を賄える計算になります。