海外のヒートポンプ普及状況に関する調査の更新について
一般財団法人ヒートポンプ・蓄熱センターは、「海外のヒートポンプ普及状況に関する調査」を2025度版に更新しました。
〇背景・目的
第7次エネルギー基本計画(2025年2月18日閣議決定)では、2050 年カーボンニュートラルに向け、需要側の徹底した省エネルギーの取組に加え、電化や非化石転換の取り組みの重要性が一層高まることが指摘されています。あわせて、ヒートポンプ(以下HP)などによるエネルギー使用の合理化を進めつつ、規制と支援の両輪により各部門での取り組みを促進していくことが明記されています。
諸外国においては、カーボンニュートラルの実現に向けた中長期的なロードマップが策定され、それに基づく具体的な施策が次々と打ち出されており、電化の推進やHPの活用は、熱分野の脱炭素化に資する有力な手段として位置付けられています。
本調査では、欧米における先進的な取り組みに加え、中国におけるHPの普及動向を整理・分析しました。HPに関連する我が国のエネルギー政策および普及拡大施策の検討に資することを目的として、「海外のヒートポンプ普及状況に関する調査」として取りまとめています。
〇調査概要
「2025年度版海外のヒートポンプ普及状況に関する調査」では欧州・米国および中国におけるヒートポンプに関連した以下の項目を取りまとめています。
・ ヒートポンプの政策的位置づけ
・ エネルギー概況、熱需要、設備事情
・ ヒートポンプがもたらす効果
・ ヒートポンプの市場動向
・ 今後の見通しと課題
〇地域別の市場動向
(1)欧州
・ 欧州では、European Green Dealが最上位の政策枠組みとして位置付けられており、その下位に位置する「Fit for 55」や「REPowerEU」は、建築分野の脱炭素化と電化を通じて HP 導入を加速させる政策として機能しています。2024年の欧州における HP販売台数は約231万台となり、前年比約22%の減少となりました。ウクライナ危機を契機とした 2022年の販売急増が一巡したことに加え、ガスボイラーの優位性や各国政府による政策変更が影響し、主要市場であるフランスおよびドイツでは特に大幅な減少が見られました。また、ガス依存度の低い北欧の成熟市場においても販売台数の減少が確認されました。
この販売減少の主因としては、①電力料金の高止まり、②補助金政策の不安定化、③前年からの在庫の持ち越し、④住宅需要の低迷など、複数の要因が重なっていると考えられます。

(2)米国
・ 米国連邦政府は、2050年までの温室効果ガス排出ネットゼロを目標とする長期戦略において、建築物のエネルギー効率の大幅な向上と、暖房・給湯分野を含むHP による電化の拡大を、ネットゼロ達成に向けた中核的な戦略として位置付けています。
・ カリフォルニア州の将来予測(高位ケース)では、家庭用暖房・給湯向けHPの販売シェアが、現在の10%未満から2030年には約50%、2040年には100%へと急速に拡大すると見込まれており、熱分野の電化促進が重視されています。
(3)中国
・ 中国における2024年の空気熱源ヒートポンプの販売台数は285万台となり、前年比約9.5%の減少となりました。用途別では、暖房用が54%、給湯用が41%、乾燥用途が5%を占めています。
・ マクロ経済の減速、不動産需要の停滞、個人消費の低迷などにより、空気熱源HP市場は逆風にさらされ、過去5年間で初めて販売台数および売上高ともに減少へと転じました。加えて、業界内における過剰競争やメーカー収益の悪化により価格競争が激化し、中国市場は成長期から調整期へ移行しつつあると業界関係者は指摘しています。
〇課題
・ 設備の初期投資費用や電力価格がガス料金と比較して高水準にある国・地域では、技術的に高効率なHPであっても、経済的な導入インセンティブが十分に働きにくい状況にあります。今後のHP普及拡大に向けては、電力課税や料金体系の見直し、運転コストに対する支援など、価格構造に踏み込んだ政策的アプローチが重要になると考えられます。
この件に関するお問い合わせ先
一般財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター
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