News Release

2022年9月1日
 一般財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター


ヒートポンプによる再生可能エネルギー熱利用量の推計結果の報告


〇再生可能エネルギー熱利用量の動向
 再生可能エネルギーについては、エネルギー供給側の電源に注目が集まりがちですが、需要側で使用する熱源も再生可能エネルギーとして定義されています。
 欧州では、2020年までに最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギー利用率を20%に向上させることを2007年に決定し、この目標達成に向けて「欧州の再エネ指令(以下、EU指令)」が成立しました。
 この指令では、ヒートポンプ利用により移動される熱源として大気熱(空気熱)、地中熱などの再生可能エネルギー熱利用量(以下、再エネ熱利用量)を再生可能エネルギーとして扱うこととなっています。
 欧州では、再エネ熱利用量を含めた再生可能エネルギー利用率向上の目標を掲げ、EU指令のもと取り組んでいることから、再エネ熱利用拡大に向けて更なるヒートポンプ普及が想定されます。
 一方、日本国では、2009年にエネルギー供給構造高度化法にて、空気熱、地中熱などが再生可能エネルギーとして定義されていますが、再エネ熱利用量として算定し、評価する制度がない状況です。カーボンニュートラル(以下、CN)に資するヒートポンプ普及促進のために、日本国でも再エネ熱利用量を評価する仕組みづくりが必要と考えます。
 
〇ヒートポンプによる再生可能エネルギー熱利用量
 本報告では、日本国内で初めて冷房も含めた再エネ熱利用量の推計を行いました。
 具体的には、本報告と同時報告の「ヒートポンプ等電化機器の普及見通しに関する調査報告」の試算結果をもとに、民生部門(家庭・業務部門)の給湯、暖房、冷房と産業部門の暖房、冷房における空気熱利用量を再エネ熱利用量ERES(図-1)として推計しました(表-1、表-2)※1。


           図-1 再エネ熱利用量ERESの概要(給湯・暖房時)


 推計結果として、表-1の現状固定シナリオ※2では「将来の世帯数の減少」と「建物断熱性能の向上」の試算条件より、ヒートポンプの処理熱量が低減し、2020年度から2050年度にかけてヒートポンプによる再エネ熱利用量が低減する結果になりました。
 一方、表-2の高位シナリオ※3では、処理熱量の低減トレンドを前提としても、ヒートポンプの普及拡大により、ヒートポンプ利用による再エネ熱利用量が増加する結果になりました。
 経済産業省資源エネルギー庁のエネルギー需給実績から、2020年度の民生部門と産業部門の最終エネルギー消費量の合計値が9,391PJ※4となります。
 一方、推計した民生部門と産業部門の再エネ熱利用量の合計値は2020年度1,460PJ※4で、これは民生部門と産業部門の最終エネルギー消費量の合計値9,391PJ※4の約16%に相当します。
 また、CN達成シナリオ※3の2050年度時点では再エネ熱利用量の合計値は2,093PJ※4となり、これは2020年度の最終エネルギー消費量の合計値9,391PJ※4の約22%に相当します。
 電気だけでなく石油等も考慮した最終エネルギー消費量に対する割合であっても、再エネ熱利用量の割合が大きいことが分かります。
 
 -1 ヒートポンプによる再エネ熱利用量(空気熱利用量)※1 現状固定シナリオ※2 PJ※4

 

2020年度

2030年度

2050年度

現状固定シナリオ※2合計

1,460

1,442

1,320

給湯

82 

85 

77 

暖房

806 

796 

728 

冷房

572 

561 

515 

 


-2 ヒートポンプによる再エネ熱利用量(空気熱利用量)※1 
高位シナリオ※3 PJ※4

 

2020年度

2030年度

2050年度

高位シナリオ※3 合計

1,460 

1,728 

2,093 

給湯

82 

256 

620 

暖房

806 

902 

942 

冷房

572 

570 

531 


 エネルギー自給率の観点では、再エネ熱利用量を加味した場合、2020年度のエネルギー自給率は11.2%
(IEA基準発熱量による経産省公表値)から18.5%(+7.3pt)になることを推計しました。
 
 
 
 
         
○本報告の詳細については、下記添付資料をご参照ください
・別添資料:令和4年度 電化普及見通し調査(報告書)
 

※1 EU指令における再エネ熱利用量算定方法と異なる点がある。詳細は令和2年度 電化普及見通し調査(報告書)参照とする。
※2 2020年度の各ヒートポンプ等の機器のストックシェア及び効率が将来にわたって一定と仮定したケースとする。
※3 2050年度にヒートポンプ等の電化が大幅に推進した場合とする。分析対象はヒートポンプ機器に加えて、民生部門における
   次世代電気温水器、産業部門における水素ボイラ化(間接電化)、ならびに工業炉の電化(直接電化)及び水素バーナ化
     (間接電化)とする。
※4 ペタジュール:10の15乗 ジュール

 

 【印刷用】ヒートポンプによる再生可能エネルギー熱利用量の推計結果の報告

 
〇本報告の詳細については、以下の添付資料をご参照ください

 添付資料:令和4年度 電化普及見通し調査(報告書)


【参考】前回のニュースリリース(2020年8月25日)
 ヒートポンプ普及拡大による最終エネルギー消費量及び温室効果ガスの削減効果の見通しについて

                   
この件に関するお問い合わせ先
一般財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター 担当 田中
 〒103-0014 東京都中央区日本橋蛎殻町1丁目28番5号 ヒューリック蛎殻町ビル6階
 TEL.03-5643-2402 FAX.03-5641-4501
   
 一般社団法人日本エレクトロヒートセンター 担当 渡邉  
 〒103-0011 東京都中央区日本橋大伝馬町13番7号 日本橋大富ビル6階  
 TEL.03-5642-1640 FAX.03-5642-1734