News Release

2020年 8月25日
 一般財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター


ヒートポンプ普及拡大による
最終エネルギー消費量及び

温室効果ガスの削減効果の見通しについて


 一般財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター(東京都中央区、理事長:小宮山 宏)は、再生可能エネルギー源の利用技術であるヒートポンプ・蓄熱システムの普及拡大に取り組んでおります。
今年度に入り、新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的感染拡大の影響による、脱炭素への取組みの遅れの懸念に、国際社会は警鐘を鳴らすとともに、脱炭素社会に向けた長期目標や取組みを提言しています。
提言の中でも期待の大きいヒートポンプについて、国内における普及拡大による最終エネルギー消費量及び温室効果ガスの削減効果を分析しました。
 上記の削減効果は、日本の約束草案の2030年度温室効果ガス排出量削減目標の12%2050年度に向けての野心的な目標の約14%となり、ヒートポンプが今後の脱炭素社会に向けたグリーンリカバリーの鍵となることを示唆する結果となりました。

〇国際的なヒートポンプに対する注目の高まり
 パリ協定やSDGsにおいて、気候変動への対策が各国で取り組まれる中で発生した新型コロナウイルスの感染拡大の最中、7月9日に国際エネルギー機関(IEA)は、各国大臣閣僚等を集め、脱炭素に向けた取組みが減速することのないよう警鐘を鳴らすとともに、具体的な取組みに向けた提言を発表し、電化(electrification)とヒートポンプ活用の重要性を示しました。日本では、長期エネルギー需給見通しの省エネ対策の一つとして、ヒートポンプは導入目標値が設定され進捗管理されてきましたが、「革新的環境イノベーション戦略(2020.1.21)」、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会「エネルギー情勢の現状と課題(2020.7.1)」において、改めて電化の重要性が示されヒートポンプが注目されています。


〇ヒートポンプの普及拡大による最終エネルギー消費量及び温室効果ガスの削減効果※1
 ヒートポンプの技術開発動向やヒートポンプ機器の適用分野等を踏まえて、ヒートポンプの普及見通しに係る定量的分析を行いました。民生部門(家庭および業務部門)や産業部門の熱需要を賄っている燃焼機器などをヒートポンプ機器で代替した場合、最終エネルギー消費量及び温室効果ガスの削減効果は以下のとおりです。

 ➢ 最終エネルギー消費量削減効果(2018年度BAU基準:中位ケース)
   2030年度:▲914万kL、 2050年度:▲3,132万kL
   ➢ 温室効果ガス排出量削減効果(2018年度排出量基準:中位ケース)
       2030年度:▲3,754万tCO2、2050年度:▲13,699万tCO2
 
 この値は、2015年7月に発表された日本の約束草案のCO2削減目標(2030年度▲26%:約3.08億tCO2)の約12%、パリ協定における2℃目標達成のため2050年までの長期的な温室効果ガス排出削減目標(▲80%:約9.5億tCO2)の約14%に匹敵します。

 ➢ 最終エネルギー消費量削減効果(2018年度BAU基準)

           最終エネルギー消費量の推移          
         
 

                           業種別・用途別削減効果の内訳(中位ケース)                 
       
        


 ➢ 温室効果ガス排出量削減効果(2018年度排出量基準)

           温室効果ガス排出量の推移
 

           業種別・用途別削減効果の内訳(中位ケース)                         
      



 建物や設備のライフサイクルを鑑みると、2030年や2050年は決して遠い将来ではなく、ヒートポンプが導入できる新築や設備改修の機会は1~2度しかないと考えられます。日本の政策目標を達成し、国際社会のより高い期待に応えるためには、数少ない導入機会にロックインを防ぎ、低位・中位ケースにとどまることなく、高位ケースによるグリーンリカバリーを目指す取組みが求められます。

需要想定やヒートポンプの普及率設定、算定など詳細な考え方については、下記添付資料をご参照ください。

  添付資料:令和2年度ヒートポンプ普及見通し調査

【印刷用】本ニュースリリースのPDF形式ファイル


※1 BAUとは、特段の対策の無い自然体ケース(Business As Usual)。ここでは2018年度の各ヒートポンプのストックシェア及びフロー効率が将来にわたって一定と仮定した現状固定ケース。最終エネルギー消費量削減効果については、長期エネルギー需給見通しにおけるBAUとの差を削減量とする考え方に準ずる。また、温室効果ガス削減効果については、日本の約束草案における2013年度のCO2排出量との差を削減量とする考え方に準ずる。いずれにおいても、基準年度、マクロフレームの将来見通しが異なり単純比較はできないため、あくまで参考。          
                                           

           

                  
この件に関するお問い合わせ先
一般財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター 担当 佐々木、渡辺
〒103-0014 東京都中央区日本橋蛎殻町1丁目28番5号 ヒューリック蛎殻町ビル6階
TEL.03-5643-2402 FAX.03-5641-4501