News Release

令和6年6月5日
 一般財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター


産業部門のヒートポンプ導入に関する調査報告
~ヒートポンプへの代替ポテンシャル調査、導入事例に基づくコスト試算~



 熱需要の脱炭素化・熱の有効利用に向け、脱炭素成長型経済構造移行推進戦略(GX推進戦略)において、産業部門でのヒートポンプ導入促進が明記されました。また、令和5年度補正予算においても省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金(Ⅱ)電化・脱炭素燃転型が新たに創設され、「ヒートポンプで対応できる低温域は電化のみ」を対象とする等、支援が強化されている状況です。
 本調査は、業種ごとに大きく異なる産業部門のエネルギー使用実態を定量的に把握し、ヒートポンプで対応できるポテンシャルを確認するとともに、導入事例のヒアリングにより、産業用ヒートポンプの導入にかかるコストや効果の実態を明らかにすることを目的として実施いたしました。

〇調査結果(概要)

(1)ヒートポンプへの代替ポテンシャル調査
 日本の製造業主要20業種のエネルギー使用状況について、プロセスごと、エネルギー種別、使用温度帯別に整理し、ヒートポンプで代替可能な温度帯で使用されている燃料・蒸気のエネルギー使用量=ヒートポンプ等への代替ポテンシャル(GJ)を推計いたしました。

 ▷主に温水ヒートポンプへの代替が想定される100℃以下の温度帯が使用されるプロセスでは、
  231,153千GJの代替ポテンシャルが推計されました。同ポテンシャルは、設備容量換算※1
  約37,770千kWとなります。
   【参考】環境省地球温暖化対策計画(R3.10.22閣議決定)における2030年度の
       産業HP導入見込み(累計導入設備容量):1,673千kW

       ※1.設備容量への換算条件:0.0036GJ/kWh、全負荷相当時間1,700時間
        (R4年度電化普及見通し調査産業用加温機器の全負荷相当時間より)

 ▷本調査により、多くの燃料・蒸気がヒートポンプで代替可能な温度帯で使用されていることが確認できました。
  実際の導入には、温度帯の適合に加え、費用対効果や設置場所、検討できる人材の有無、機器代替が製品品質に
  与える影響も含めて検討が必要となります。

  <別添1>ヒートポンプへの代替ポテンシャルについて
  <別添1ー2>HP代替ポテンシャル(全20業種)《Excel》

(2)導入事例のヒアリングおよびコスト試算
 11プロセスを対象に、温水ヒートポンプおよび蒸気ヒートポンプの導入事例ヒアリング調査を実施し、事例に基づく導入コストやランニングコストなどを試算いたしました。
 
【ヒアリング対象プロセス】


■ヒアリング概要
 ▷対象とした11プロセスの事例では、概ね30~70%の省エネ効果が確認でき、ほぼ比例して同程度のCO2削減効果が
  確認されました。
 ▷ヒートポンプの導入により、燃料使用量を0にできた事例は1事例のみであり、その他事例は燃焼機器による
  バックアップ・併用での導入でした。

■ヒートポンプ導入拡大に向けた示唆
 ▷イニシャルコストに関して、工事費や周辺部材等の機器本体以外のコスト負担が大きく、イニシャルコスト全体に
  占める機器本体以外のその他コストは、本調査対象11事例平均で5割程度、最大で7割程度占める事例が確認され
  ました。このことから機器本体のみへの導入支援ではなく、工事費等その他コストを含んだ導入支援が有効である
  ことが推察されます。
 ▷今回のヒアリングにおいて、企業が許容できる投資回収年数基準は、大企業3~5年程度、中小企業3年以下である
  ことが確認されました。ヒアリング対象の11プロセスにおいて、同基準を満たすように導入支援を行った場合、
  必要額732億円で、321万t-CO2/年の削減効果が期待されます。

  <別添2>導入事例のヒアリング調査について


                   
この件に関するお問い合わせ先
一般財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター 担当 平田
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