News Release

2023年10月19日
 一般財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター


ヒートポンプ普及想定によるエネルギー自給率向上への寄与
~ヒートポンプで汲み上げる大気熱(温熱)の計上~



〇エネルギー自給率の試算結果
 2020年度エネルギー自給率11.3%に対し、図-1のヒートポンプで汲み上げる大気熱(温熱)※1をEUと同様に再生可能エネルギー熱として計上し、2050年度ヒートポンプ普及想定※2による一次エネルギー消費量変動分を考慮したところ、以下の通り、我が国のエネルギー自給率向上に寄与する結果となりました。



 2020年度エネルギー自給率は11.3%と発表※3されていますが、これに2020年度ヒートポンプで汲み上げる大気熱(温熱)を計上すると15.9%(4.6pt寄与)になりました。
 2050年度ヒートポンプ普及想定※2に伴う大気熱(温熱)の計上及びヒートポンプ普及想定による一次エネルギー消費量変動分を考慮して、エネルギー自給率を算定したところ21.9%(10.6pt向上)になりました。この一次エネルギー消費量の変動分は、2050年度の非化石化が進んだ電源構成※4を加味しています。
 大気熱(温熱)の計上を前提にした場合、2020年度から2050年度へのヒートポンプ普及想定※2によるエネルギー自給率の向上【15.9%→21.9%】は、ヒートポンプの普及にはエネルギー自給率を6.0pt向上させるポテンシャルがあることを示します。ヒートポンプは既に確立した技術ですが、これらよりエネルギー自給率向上に大きく寄与することが分かります。
 

〇エネルギー自給率の試算内容

 本報のエネルギー自給率は、2022年9月1日に当センターホームページのニュースリリースへ掲載した既報1※5及び既報2※6の試算結果を踏まえ、式2、式3のように試算しました。以下のエネルギーに関する数値の標記は、一次エネルギー相当で、単位はPJ(ペタジュール:10の15乗ジュール)になります。





 式2、式3の大気熱(温熱)※1は、既報2で報告した表-1の数値を使用しています。式3に使用した2050年度の大気熱(温熱)※1は、既報1のヒートポンプ普及想定※2を踏まえ、推算されたものになります。
 式3では、2020年度の実績に対し、既報1の2050年度ヒートポンプ普及想定※2による電力増加分(非化石分、化石+非化石分)、電気に代替されるガス・灯油・重油の減少分が考慮されています。これらは既報1の報告数値の内訳になりますが、本報の試算を行う上で新たに抽出し、盛り込みました。なお、既報1の試算対象である部門・用途※10のヒートポンプ以外の電化、及び既報1の試算対象外の部門・用途※11における「エネルギー消費の変化」及び「電源構成の変化」は考慮していません。


〇ヒートポンプの役割

 本報の試算結果より、再生可能エネルギー熱の利用が可能なヒートポンプは、大気熱(温熱)の計上で、我が国のエネルギー自給率に寄与することが言えます。さらにヒートポンプ普及想定に伴う大気熱(温熱)の計上及びヒートポンプ普及想定による一次エネルギー消費量変動の観点から、既に確立した技術であるヒートポンプが我が国のエネルギー自給率向上に大きく寄与することが分かります。
 また、EUのREPowerEU※12が示すように、エネルギーセキュリティの観点からもヒートポンプの普及は大変有効です。
 供給側の非化石化が進んだ電源と同時に、需要側でのヒートポンプの活用推進は、我が国のエネルギー供給構造を強靭にすると考えます。
 
 
 
 
 
 
 


※1  既報1※5の高位シナリオ※9における家庭部門(給湯・空調用途)、業務部門(給湯・空調用途)、産業部門(空調用途)において推算した
    大気熱(温熱)で、これらを本報の試算に使用した。※表-1参照
※2  既報1※5の高位シナリオ※9における試算条件の内、ヒートポンプのみの普及想定分を抽出し、本報の試算に使用した。この普及想定には、
    ヒートポンプの将来の機器効率の改善想定も含む。
※3  資源エネルギー庁:令和4年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2023)、「第2部 エネルギー動向、第1章 国内エネルギー動向、
    第1節 エネルギー需給の概要、4.エネルギー自給率の動向、第211-4-1」(2023年10月16日取得)
※4  公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE):2021年5月13日総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会提供資料
    「2050年カーボンニュートラルのシナリオ分析(中間報告)」補足版、【参考(表)】日本の発電電力量(2050年)の参考値ケース。
    (2023年10月16日取得)
※5  ヒートポンプ・蓄熱センター:(既報1)https://www.hptcj.or.jp/index/newsrelease/tabid/2009/Default.aspx
※6  ヒートポンプ・蓄熱センター:(既報2)https://www.hptcj.or.jp/index/newsrelease/tabid/2010/Default.aspx
    (※5,6 URL 2023年10月16日取得)
※7,8 IEA基準発熱量による経済産業省公表値(2020年度)。(2023年10月16日取得)
※9  既報1※5の試算条件で、試算対象を家庭部門(給湯・空調用途)、業務部門(給湯・空調用途)、産業部門(空調・加温・加熱用途)、
    農業用(ハウス加温用途)、その他融雪とし、燃焼機器からヒートポンプ及びヒートポンプ以外の電化機器への代替について試算した。
    この試算において、ヒートポンプ等電化機器の将来の機器効率の改善想定も含む。ヒートポンプ以外の電化機器への代替は、家庭部門及び
    業務部門の給湯用途における次世代電気温水器への代替、産業部門の加温用途における水素ボイラ化(間接電化)、ならびに産業部門の
    加熱用途における工業炉の電化(直接電化)及び水素バーナ化(間接電化)としている。本報の試算では、ヒートポンプの代替のみを
    対象にしている。
※10 高位シナリオ※9の試算対象で、家庭部門(給湯・空調用途)、業務部門(給湯・空調用途)、産業部門(空調・加温・加熱用途)、
    農業用(ハウス加温用途)、その他融雪を指す。
※11 例えば、各部門における照明や冷凍冷蔵庫、既報1で網羅できていない産業部門の加熱用途、運輸部門等を指す。
※12 ロシアのウクライナ侵攻を受け、EUが2022年3月8日に発表したロシア産化石燃料依存から脱却を目指す政策。


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